北方領土に関して内外の論調ほか

メドベージェフ大統領国後島訪問について、同時期に二カ国と領土問題に着火するのでは、菅首相民主党は無能と言われても仕方がない。
鈴木宗男氏(11月1日付11月2日付)、佐藤優氏は外務官僚の不作為を指摘しているが、ポジショントークの要素があるにしても現実にその通りなのだろう。



駐露大使一時帰国のニュースには苦笑した。(
駐ロ大使が一時帰国=外相に情勢報告へ(時事通信) - Yahoo!ニュース)、政府は「大使召還ではない、情報を聞くための一時帰国だ」と言いたいのだろうが、それで世界に通るのかと思わず突っ込みたくなる。今回はロシアもロシアだが、やはり民主党のやり方が幼いという印象は否めない。

もともと河野大使はAPECの準備のため今月上旬には帰国する予定だった。政府関係者は「帰国を数日早めることで、日本の重大な懸念をロシアに伝える」と今回の措置の狙いを解説。同時に対抗策とは明言せず、ロシアを刺激することは避けたというわけだ。

 政府は今後、河野大使から詳しい状況を聴取する一方、ロシア側の対応も見極め、対抗措置を検討する。閣僚交流の停止といった強行策に突き進むべきだとの意見はなく、今後は「拳の下ろし方」(外務省筋)を想定しながらの対応になる。

 ただ、APEC時の日ロ首脳会談に向けて早期の関係改善に踏み出すのかどうかについて、政府内の意見が統一されていない面もある。


東京新聞:<スコープ>ホスト国 苦心の抗議 APEC日ロ会談、不透明:今日の読み物(スコープなど)(TOKYO Web)

案の定ロシア議会は強く反発した。

 露下院のコサチョフ国際問題委員長はインターファクス通信に対し、「日本の新たな悲しむべき過ちだ」と批判、大使の一時帰国という「過激な一歩」でロシアの立場が変わることはないと断言した。マルゲロフ露上院国際問題委員長も、「露大統領の訪日直前の大使帰国は、挑戦だ」と述べた。

 大統領の「国内視察」に、他国が口を挟むのは容認できないとする論法はロシアの政界、外務省に共通している。コサチョフ委員長は、「騒ぎを大きくしているのは日本側だ」と語った。


ロシア反発「騒ぎ大きくしているのは日本側」 (読売新聞) - Yahoo!ニュース


『大統領の「国内視察」に、他国が口を挟むのは容認できないとする論法はロシアの政界、外務省に共通している。』とは、少なくともロシアは北方領土を自国の領土だと主張しているのだから、彼らからしたら当たり前だろう。
一度二島返還で合意しているなど尖閣問題とは違うところはあるが、ロシア議会からすれば前原発言は、先日の尖閣をめぐる中国による日本への強硬発言と似たようなものに取れたはずだ。我々日本人からすれば前原発言は当然だが、彼我の立場の差に想像が至らないまま取り上げるのでは、結果的にナショナリズムを煽ることになる。


今回少しだけロシアの通信社と海外ニュースをのぞいたが、目についたのが駐日大使召還をしないというロシア側の表明だった。このことに関しては、日本メディアではあまり言及されていない。単に報道のタイミングが遅れているのかもしれないが、そうでないとすれば、報道の仕方が偏っていると言われても仕方がない。(追記:たんに遅れてた模様。NHKの夜のニュース冒頭で扱ってた)



元々ロシアは半端ではないナショナリストがいるお国柄であり、プーチン元大統領も苦慮している様子があったけれども、現在メドベージェフ大統領は再選に向け、国内勢力に対して敏感にならざるを得ない状態にある。おそらくプーチン首相と大統領の座を争う事になるだろうと予測されているが、現状、対立はしないまでもプーチンとの微妙な状態に、ルシコフ・モスクワ市長解任に至る政争など(モスクワ市長の長期政権がいよいよ終焉? メドベージェフの猛攻撃に「もはやこれまで」か JBpress(日本ビジネスプレス))、現大統領をめぐる状況は混沌としつつある。
欧米との融和を図るメドベージェフは、意識的に愛国心を強調せざるを得ない立場でもあるだろうし、今回は明らかに国内を意識したパフォーマンス要素も大きい。


元々北方領土をめぐる、ロシアの右派と外務省の日本への対応は異なり、日本側に配慮を見せる外務省と、地元極東地域の強硬派とは立場が違う。これに限らず日本国内では強硬派の意見ばかり紹介される傾向がある気がするが、今回もロシア側から日本への配慮の信号は出されている。現在、日本ロシア両者ともに本気で対立する気がないのは認識されており、APECでの日露会談も探られている模様だが、まだ流動的のようだ。



BBCの日露中メディアの論調を集めた記事では、人民日報の、ロシアに日米同盟を試す目的があるとの言及が目に付いた。英語版を探したが(眠くて)力尽き完全には確認がとれなかった。中国語版にしか無かったとしたらお手上げ。

Zhang Quan in China's Shanghai's Jiefang Ribao

"The Russian president's high-profile landing on the islands was intended to show a diplomatic stance of 'looking East', while using a hardline approach to repair Russia's position and put pressure on the young Kan cabinet, in order to test the reaction of the US-Japan alliance."


BBC News - Press see Kuril visit as major step


そしてアメリカの報道官はこう言っている。

クローリー国務次官補は「アメリカは、北方領土に対する日本の主権を認める」と述べ、日本の立場への支持を改めて確認しました。ただ、北方領土は日本の施政下にはないことを理由に、アメリカの対日防衛義務を定めた日米安保条約第五条の適用対象にはならないとの認識を明らかにしました。

 アメリカは、尖閣諸島については「日本の施政下にあるため、安保条約の適用対象」との立場で、北方領土の問題とは一線を画した形です。(03日05:56)

米次官補、北方領土は「安保対象でない」」 News i - TBSの動画ニュースサイト


継続してウォッチしているわけではないので、今回は言及しないでおこうと思ったが、気になったので結局書いてしまった。報道の仕方が気になった時に書くのでいつも批判的な口調になってしまうが。