クリミアタタールへの抑圧と、その報道のされ方についてなど

先日のエントリの続き。
池内恵氏のトルコの欧州への複雑な感情と西欧の抜き難い優越意識についての文章(参照)を読んで、自分の書いたものと非常によく似ていたのでまた何か書こうかと思ったのですが、ユーロビジョンのクリミアタタール優勝などがあったせいでツイートしてる内にまた違う方に行ってしまいました。


池内氏の文章から一部引用

「護衛はさせられるけどテントに入れてもらえない」屈辱がトルコを非西欧陣営に押し出しているということは、これは本当に西欧側には通じていない。下請けさせて当たり前、だと思っている。保守派もリベラル派も。リベラル派は、トルコの社会がリベラルではない、と批判することで、実際にはトルコに都合よく下請け仕事をさせる後ろめたさ、矛盾を、他者にも、そして自らに対しても隠している。


こうした感覚は当然西側メディアからも欠落している為、自身も「欧米」から差別されてきた(事に意識的な)日本人にとっては、報道を追うにも結構辛い所があります。この後の言及も途中まで似た事を書かれていて「おお」と思ったのですが、これについてはまた次回。



で、タイトルのクリミアタタールについての話になるのですが。
直近だけ説明しますと、4月末にはロシア司法省が彼ら独自の議会「メジリス」を過激派組織認定し活動を禁止し、翌日にはクリミアの複数のジャーナリストや活動家への強制捜索を実施。5月頭にはシンフェロポリのモスクを武装した男達が強制捜索、一時100人以上を拘束しています。

ちなみにロシアのこの「過激派認定」が非常に曲者なんですが、メジリスに関して指定を主導しているのは、あの「美しすぎるクリミア検事総長」ポクロンスカヤさんです。立場が立場なんで、この人は他にも証拠もへったくれもないマイダンへの復讐的位置付けの裁判の動きも「主導」していますが(その一方、同時進行で「イルカと戯れる検事総長」映像が公開されたりします)。

<追記>

5月12日、ロシアのメディア監督機関ロスコムナゾルが、RFE/RL のクリミアサイト Krym.Realii を露全土でブロック。

タス通信によると、これもポクロンスカヤ・クリミア検事総長の要請。ポクロンスカヤ曰く、「延々とクリミアの政府機関の名誉を傷つけており」「過激主義及び民族憎悪を助長している」事などが理由だと。

又同日FSBバフチサライ武装し強制捜索を実施。「テロ活動」でクリミアタタール4人を逮捕。ポクロンスカヤ曰く、1人は町の「地元テロリスト細胞」のリーダーだと。

これも同日にFSBは、元バフチサライ市長でメジリス副議長イルミ・ウメロフを逮捕。ポクロンスカヤは、ウメロフは露刑法280.1条2項「露連邦の領土保全を変更する目的の、公けでの呼び掛けもしくは活動」下の容疑に関連し捜査されていると説明。

ちなみにクリミアタタールも黙って弾圧されているような人達ではないので、民族的に同じテュルク系の(そして例のロシア機撃墜後、唐突に露のクリミアタタール抑圧に対し熱心になった)トルコとウクライナの間の特使として活躍したり、ウクライナ-クリミアの境界を封鎖してクリミアとの貿易(や電力)を止めたりしてました。これについてはウクライナや西側からもかなり批判が出ていましたが。
たぶん彼らへの抑圧を継続的にフォローしているサイトは、日本語圏にはありません。





資本関係の話ですが、私が主に見ているサイトの中には元ユコスのホドルコフスキーの息子さんが資金を出している所もあります(サイト自身が時々言及している)。当然ロシア側から非常に嫌われており、時々攻撃されてサイトが落ちたりしてました。そんな事も念頭にありながら書いているツイートです(というか、ツイートだけで読むとかなり言葉足らずになっています…)

※ツイートで英語読みのナディア・サフチェンコと表記してますが、実際には「ナデジダ」の読みです。


<追記>
NHKのユーロビジョン優勝記事はこちら
クリミアの少数民族の歌手 欧州最大の歌謡祭で優勝 | NHKニュース



<おまけ>