ウクライナとロシア、そろそろ開戦?

現在、ウクライナとロシアの国境付近、また国境を越えロシアの兵器(話題になったBukミサイル含め)、軍事車両、戦闘ヘリ、部隊などが動いており、そろそろ両国間で戦争になるのではとの観測が出ています。

Ukraine and Russia Are Closer Than Ever to All-Out War : Mashable
Russia’s Military Is Already in East Ukraine. Will There Be a Full-Scale Invasion? - The Daily Beast


複数の専門家等が「グルジア*1シナリオ」、2008年のグルジア南オセチア)紛争*2に言及していますが、しばらく前から国境を越えロシア側からの攻撃は続いていて、ウクライナ国境警備隊も反撃を行っていました(ただこれに関してはほぼ露からの一方的な攻撃に近い)。ある意味両国間の戦闘は既に始まっているとも言えます。
両国の国境線は長く、現在戦闘中のドネツク、ルハンシク両州以外の州に対してもロシアが軍を配置してるという情報があり、他幾つか(確認の難しい物を含めて)補完するような情報も出てきています。


マレーシア航空MH17便撃墜後、戦闘が郊外などから市内に移り、ウクライナ政府による攻撃が更に激しさを増し住宅地に及ぶようになってきました(あくまでキエフは住宅地への攻撃を認めないのですが)。
民間人の犠牲に関して、西側からキエフへの非難も大きくなってきており、これ以上今の状況が続けばウクライナ側も人道的非難を免れない状況になってきました。


ロシアの動きは親露派民兵が単独では持ちこたえられなくなった事が直接的な理由でしょうが、そのあたりと呼応する動きとして、このところの親露派指導者に激しい入れ替わりがあります。

先日ロイターに対し、MH17便を撃墜したBukミサイルを親露派が持っていたと認めた*3ボストーク隊司令官ホダコフスキーは、現在親露派の中核をなすストレルコフ自称国防相と非常に不仲で、他のロシア人指導者からも信用されておらず、暴露証言の少し前にドネツク民共和国自称副首相をクビになっていました。
この地元出身指導者の追放人事は、いったん処刑も噂されたポノマリョフ自称スラビャンスク市長の放逐、二回の暗殺未遂後にモスクワで辞任を発表したプシリン自称最高会議議長に続く物で、地元出身の有力な親露派指導者はグバレフ自称知事以外、現在ほぼいなくなっています(訂正:ルハンシク人民共和国ボロトフはルハンシク出身。またホルリフカ司令官ベズラーはロシア軍出身でロシア市民権を持っているが、クリミア生まれで(当時はソ連領)ホルリフカで長く生活実態がある)。


代わりに任命されたのが、モルドバの親露分離地域、沿ドニエストルで20年間軍事、諜報面含め大きな役割を果たしたロシア人アンチュフィエフ。この任命はロシアがウクライナでの軍事作戦を見据えた人事とも解釈可能です。

またストレルコフはスラビャンスクを放棄した事でロシア国内の強硬派から強烈な批判に晒されましたが、数日前これも射殺されたプロセルコフ自称副外相の件からは(この人はロシアの「ファシスト」イデオローグ、アレクサンドル・ドゥギン支持者なのですが)、ロシア国内の右派の争いがウクライナの親露派に大きな影を落としている事が見てとれます。
コサックの司令官(訂正)はいつの間にかいなくなり、外からはいまいち窺い知れない(時に支離滅裂な)親露派の動きですが、クレムリンの意向だけで解釈する事もまたいささか無理があるようです。



以上述べたように、ウクライナ国内の親露派指導者はほぼ全員ロシア人ですから、現状でもある程度ロシアとの戦争状態であるという言い方もできるのですが(民兵全体にウクライナ人が多いか、ロシア人が多いかは内部証言でも見方が分かれます)、実際に戦争に突入するかどうか(もしくはロシア的「平和維持部隊」による介入の形を取るか)は、まだプーチン氏自身決断していないのかもしれません。

ただ、そのオプションを現在ロシアの大統領がその右手に持っている、とは現状言えるようです。

*1:先日英語読みでとグルジア政府からのお達しがあり、「ジョージア」が正しいらしい

*2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E3%82%AA%E3%82%BB%E3%83%81%E3%82%A2%E7%B4%9B%E4%BA%89_(2008%E5%B9%B4)

*3:英語元記事http://www.reuters.com/article/2014/07/23/us-ukraine-crisis-commander-exclusive-idUSKBN0FS1V920140723 日本語版 だいぶ略してある http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0FS2DJ20140723 /ちなみにこの後ロシアメディアに「Bukについては何も言ってない」と発言したとの報道が出て、ロイターに証拠録音を出されていた