消えるべきもの


普通とはどういうものか忘れてしまった。


誰かと話す時に、その人は当たり前にわたしに普通を求める。
わたしには、でもそれはできない。


こんな吐露を続けても意味が無い。それは知っている。
でも、他人の心に届く言葉を吐いたとして、それでどうだということもない。
ここから世界まで見通しが利いたとして、それが何をもたらすわけでもない。


あなたの心を動かして、それでどうだというのだろう。
言葉が誰かを貫いたとして、さらに孤独に陥るだけだ。


あなたにいったい何がわかるというのだろう。
そこにいる全ての人を振り返らせても、それは単に必然に過ぎない。
何度でも何度でも、わたしはそこで取り残される。


心を掴む事など簡単。
目の前の全てを塗り替えるのは、息をするより容易な事だ。


目の前の誰もにとって、自分があるべからざるものならば、常に存在を証明し続けなければならない。
あなたとわたしはそう変わらないのだと、常に周りに理解させ続けなければならない。


結局、その繰り返しも何程の意味はなかったけれど。
わたしの言葉は本質的に、異端と断罪されうるものだろう。己の肉と声をもって、存在しうるとは思わない。
いずれおそらく消えてしまうべきである事は、己の頭で理解している。