庇付きの帽子


最初から、「あなたはこの程度でしょう」って思いながら近づいて来る人がいて。その人なりの処世として、自分と相手の足元とを切り分けるのだろうけれど。
結局本音を出さないまま、さりげなくこちらに後脚で砂をかけて行ってしまった。


「人生の中で多くの物を諦めた」と、わたしは以前その人に言ったと思う。
もし対象が何らかの命であったとしても例外にはなりえない。例外が作れるのなら、それは現実の人生ではないんだから。


その人は己の視線にしか興味がなかったし、同じように無遠慮に過去を誰かが踏みつけていくたび、わたしは、彼らが自分のやり方に従わせたいだけなのだと理解した。


あなたは「そういう問題じゃない」と言うだろうけれどね。
あなたとわたしの間の問題ではなくて、単にわたしが偽善であって、助けようとはしないのだと。

でもわたしは自分を助ける方法を教えて欲しかった。あなたが、そうではなく彼らが、言葉だけ聞きながら見てはいなかった私自身の人生を。


おそらくわたしに興味を持つ人間には、ある類型があるのだろうと思う。
なぜわたしを自分の欲望のままに動かそうとするのだろう。そんな人間ではないと思ったから魅かれたのではなかったのか。


あなたがシンパシーだとみなしていた物を、満たせないのは最初からわかっていた。
わたしの人生の形を、あなたは決して理解しようとはしないのだから。