海に空
最後に海に行ってから、どのくらい経っただろうと考えた。
誰かが海の話をするたびに、結局自分の欠落を思い知らされる。
空を見つめることすらできないで、癒されるはずもない傷を追い越して、世界は私を追いていってしまう。
わかっているけれど。
人並みさを持っていないなら、結局一人で取り残され続けるしかないのだけれど。
少しだけ迂闊な夢を見ようとして、何もかも棒に振ってしまう。
あなたは何も知らないまま、一言だけ言葉を交わして私の横を通り過ぎていく。
ならば初めから人に生まれなくて良かったのに。風でも、波でも、過ぎていくだけで全て。
そうであればこんなくだらないことで辛がって、ひとりでいるのがいやだと泣くことなんかなかったのに。