仔猫の目


思わず言及してしまう、にゃんこ好きのサガ。


http://d.hatena.ne.jp/heimin/20130506/p1




ずっと前、上野の博物館に行った帰り、駅の手前の植込みにこういう子猫がいたんだよね。横のコンビニでツナ缶買ってきて、あけてやって、食べたら見る見るうちにその子の目が治ってしまった。あれは、魔法を見てるようだった。


子猫に構っているうちに、いつもご飯をやっているらしいおじさんとおばさんがわたしの横にやってきて、この子の母親は林の方にいるんだよと教えてくれた。
でもその時はその母親がどこにいるのかわからなくて、子猫を放っていくのが忍びなくて、わたしはその場を離れ難かった。



「ここらへんはカラスがいてねえ」
「そうそう、子猫は格好の標的だから」



二人はこのあたりがいかに子猫にとって危険な場所か、延々としゃべり続けた。
真偽はよくわからなかった。明らかにわたしに子猫を連れて帰らせる為に、二人は大袈裟に話していたけれど、でもそれらは全て充分にありそうな話だった。



当時、我が家が猫をまだ飼っていた時期だったか、いなくなった後だったかすら思い出せない。植込みの中にいる子猫と空いたツナ缶を、眺めていた事だけを覚えている。まだあの頃は、見知らぬ大人と目を合わせて話せるほど大人ではなかったし。


あの猫はあれから何日か、何年か、生きていたんだろうか。あの時に戻っても、私があの子を連れ帰る事はないんだけれど。