馬肉に続いてお魚偽装

日本人から見ると今さら感満載なのだけど、しばらく前に欧州あたりで大騒ぎになった食品偽装。ビーフ100%のはずが馬肉入りだったというニュースは日本でも時間差で結構報道されてたけど、昨日はBBCで「今回は魚偽装」と報道してた。


なぜか知らないけど、この食品偽装のニュースの時って、妙に番組のテンションが高いんだよね。昨日の番組では若いシェフ(たぶん。なぜかお仕事用のユニフォームで出演)二人をスタジオに呼んで違いを説明させた挙句、男性キャスターがニコニコしながら説明用のフィッシュアンドチップスを食っていた。しかも味の違いを説明するのかと思ったら、いきなり途切れて次の話題に行ってしまうし。一体あの演出は何だったのだろう。


で、馬肉の問題でも同じだったのだけれど、流れとして「で、具体的にどこが問題なの?なんか悪いもんとか入ってるの?」という極めてまっとう且つ、お間抜けな疑問が挟まれる。
英国人的には、「僕らのフィッシュアンドチップスがなんか違うもんでできている!」事がわかりやすいポイントらしく、タラ(正確に言うと"cod"と"haddock"の二種類であるらしい*1)じゃなくて、東南アジアで養殖されたスケソウダラやナマズが使われていたりするんだよ、とWEBの記事(BBC News - Mislabelled fish slip into Europe's menus)では説明されていた(テレビの説明はあんま聞いてなかった)。
記事の元になっている研究論文はサルフォード大学の Dr.Stefano Mariani によるものとあるけれど、検索しても見当たらない。まあ見つかったとしてもあれだが。



今回の調査では(対象は英国とアイルランド)、"cod"や"haddock"の7%が偽装だったとあるから、日本人から見るとそんなに多くないという印象を受けるが、同記事では、2010年の調査を引用して(European Commission : CORDIS : Newsroom : Study finds 25% of fish on sale are mislabelled)ニューヨークのレストランで出されている魚の25%が表示通りではなく、アイルランドのダブリンでも"cod"や"haddock"として売られている魚の四分の一が偽装だったとしている。しかもダブリンでの調査では、燻製のタラに限れば34例中28例の表示が違ったというから、ほとんど無茶苦茶と言っていい。



ただまあ、日本人からすると過去に遡った気分というか、「どこもそんなもんだろ」という感想になってしまうのも事実で、食品偽装に関するドタバタを見ていると、欧州のダメさの温度が見えてきてなかなか面白かったりする。
しかし日本ってこういうきちんとした研究調査ってされてるんだろうか。少なくともこうやって大々的に報道された事はないと思うけれど。検索してる内に他の大規模な魚の偽装研究についての記事も見つけたけれど、ざっと見ただけでもちょっと頭が痛くなった。魚についての偽装は日本やイギリスだけでなく全世界的な傾向のようだし、はたして有効な策なんてあるのかなと。



でまあ、フィナンシャルタイムズが馬肉の時にしれっとこんな事を書いている。

過去数十年で生産と流通の集約が進み、加工業者から食品を調達するスーパーマーケットが小さな商店に取って代わったことは、ある意味で普通の顧客に利益をもたらした。基本的な品質は高くなり、価格は抑制されたからだ。1970年代の英国のソーセージやミートパイの中身は考えたくもない。


欧州馬肉スキャンダル、安値追求のツケ:フィナンシャルタイムズ


そうか、昔の方がモノはひどかったかもしれないのか、と思うとちょっと眩暈がする。


この件については調べてるわけでもなんでもないので仔細まではわからないのだけど、EU統合による、域内流通網の魑魅魍魎化とか、日本の状況からして統合前からいろいろあっただろうなとか、イスラム教徒が豚肉を口にしてしまう可能性とか、多方面に根は深そうなのだけれど、とりあえず今はネタとして消費している。どうせこの件に関しちゃ日本もおんなじだし。


当事者たちも大変だ大変だと言いながら、なんかネタ感強いんだよなあ。「実は馬肉」のインパクトが強すぎたからか。