エレニさんは趣味があっていいねと言われて

また後ろめたい感覚を持つ。
映画でも音楽でも紅茶であっても、結局のめり込めるものじゃない。たとえばメンフィス・ミニーを耳にして心を奪われても、レコードを買いに行ったりはしない。ニック・ドレイクを聴いても、フレッド・ニールを聴こうとはしない。誰かと音楽や映画について語り合ったりはしない。身体が狂っているせいで、音楽は聴いているうちに意識との距離感を狂わせてしまう。


歌に命すら持っていかれると思う時があって、ある種のものから身は守れない。身体を損なわなかったなら、どうしたってそちらに引き寄せられていったのだろうし、私に流れる血はどこか現世から離れようとする傾向を持っている。名誉や世間体をあまりにも求めないのは欠落なのだと、私はずっと言い聞かせられて育ってきた。母はいつもどこかの時点で私が全てを捨てて行ってしまう事を恐れていて、そしてそれは勘違いではありえなかったから。


どうだろうね。なぜ負債を感じ続けるんだろう。わかってるけど。最初の最初から、死をずっと見つめていたんだよな。私はそれしか欲しくなかった。