チャイナドレスと彼女の事情

友人が中華街に行くというので、どこか目当ての店があるのかと聞くと、いやそうではなく別に目当てがあると言う。



どうしたのよ。
あたし今度素人芝居で役やらせられんの。



色っぽい女の役をやるのだとのこと。



何買いに行くの。
チャイナ。


・・チャイナ。
うん。


役柄は。
やり手の女社長。


・・それでチャイナ。
安くすむし。


・・大家政子じゃん。
いやいや。


スーツでロングスリットとかさ。
いやもう決めたし。


他の人は反対しないの?
うん。


・・・じゃ、好きにしたら。
うん。



しばらく後、衣裳合わせだと言って、彼女は下着と見紛う黒いナイロンのバッタモンのミニドレスを着ていた。チャイナドレスはどうしたのかと聞くと、


「入るサイズがなかったのよっ」

とか言っていた。