オーマイが2ちゃんねらーをターゲットとして取り込むべきだったという話(改題済み)

日本オーマイ立ち上げの時の、韓国オーマイ記者さんたちと浅野健一教授の座談会。内容は今更批評のしようもないが、よく読むと記者たちと浅野教授のスタンスの違いがかなり違うのが読み取れる。
今読むと面白かった箇所。現在の「オーマイ VS 2ちゃんねる」の構図を考えると示唆的。

ミン記者:

日本では進歩的な読者の層が薄いと言うことですが、その回りにいるのはどのような人々ですか?(浅野先生:沈黙する多数)進歩的な市民層と沈黙する多数はどれくらいの割合ですか?



オ代表:

2チャンネルの場合は匿名の掲示板だと言え、とにかくもの凄い数の若者が参加していることが言えると思いますが、そのような勢いをオーマイニュースのような進歩的メディアに転向させることは考えられないでしょうか。


2005年2月23日オーマイニュース座談会


元々韓国オーマイはいわゆる386世代のメディアであり、その政治的潮流を背景に持っている。ミン記者が「沈黙する多数」と言っているのは、潮流を水面下から引き上げた自負があるからだろう。現実にオーマイは保守的な既存メディアへのカウンターとして機能し、盧武鉉大統領を当選させる原動力にもなっている。


日本でもネットは「沈黙する多数」の発言する場になったが、よく言われるようにその象徴は2ちゃんねるでもあった。2ちゃんねるの場合既存マスコミ批判は同じだが、政治傾向としては韓国に比べて現実肯定的である。
オ・ヨンホ氏が読者層として2ちゃんねるに着目している事は慧眼であろうし、実現性はともかく非常に戦略的である。彼らは勢いを捕らえる必要性をはっきり意識している。(その「勢い」が現実のジャーナリズムに本当に必要なものであるのかについて、私ははっきり懐疑的であるけれども)



二年前のオ・ヨンホ氏インタビュー。

 問 オーマイニュースが韓国で成功した要因は。
 答「一番は『市民みんなは記者である』というスローガンだったと思う。また、オーマイニュースは利益を追求するのでなく、オルタナティブ(既存の代替的)な市民言論運動を目指したので、市民が賛同してくれたと思う。韓国の若い世代は、韓国社会全体やコミュニティを自ら変革できると信じており、その多くが積極的に市民言論運動に参加している」

 
 問 既存のメディアから嫌がらせや妨害などはなかったか。
 答「オーマイニュースは少人数(4人)で、ビジネスとしてでなく、市民運動的な性格を持ったジャーナリズム運動として始めたので、逆に、既存のメディアに少しは可愛がってやろうという意識があったと思う。(略)」


livedoor ニュース - ジャーナリズムは記事の質で勝負する=韓国オーマイニュース社長オ・ヨンホ氏


元々ビジネスの発想はなかったとオ・ヨンホ氏は述べており、流れの中でうまくビジネスとして軌道に乗ったという印象を受ける。市民記者の関係者にアクセスを求めていくやり方は、地縁血縁意識が強く人同士の交流が濃密な韓国で初めて成り立つのであって、日本では成立しないのではないかと私は当初から疑問に思っていた。



ジャーナリズムを特定の傾向の言論活動に用いようとする発想に根本的な問題は感じるが、本家にある戦略的視点、ネット地図の把握は日本のオーマイには欠けていると言わざるを得ない。現実に日本でオーマイモデルをビジネスとして成り立たせるには、「進歩的」路線を捨てて2ちゃんねるの流れも借りる必要性があっただろう(勢いが弱まっている事は指摘される所だけれども)。
書いていてだんだん馬鹿馬鹿しくもなってくるのだが、最初から2ちゃんの反応は処々で予想されていたわけで、それを回避すらしようとする術が何も講じられなかったのは、今更だがお粗末だったとしか言いようがない。


まあ今はそういうレベルの問題でもなさそうだが・・



おまけ
オーマイ・ニュース 浅野教授の祝辞全文