弛んでいる肌

街中をすれ違って、
華奢な女性の姿を目で追う。


安い綿の花柄のスカートをはいて、
ヒールのない癖の悪い革の靴で履いている。


あなたの中で、
艶のない弛緩した肌で。
私は彼女を目で追ってしまう。



現実と彼女との間の距離を
その肌と布との間に、澱んで薄く張りついた膜から推しはかる。


あなたは
私などよりも、ずっと体に力を持っているはずなのに。



誰が自分を女だなどと思っただろうか。
今ここで現実との間を測るとき、
私は彼女のむくんで定まらない身体と
弛んだ視線を見ている。




何を見ているの?


若くきれいで愚かで無神経な女の子達に
あなたは軽侮の思いを抱いている。


あなたが現実の重さに負けて滑り落ちていくのなら、
その力の無さを私は侮って見る。



美しくもない。その肩の下がったみっともない歩き方で、
あなたの皮膚の下を見ている。


尚更顔色を悪く見せるとれかけた口紅は、
妙な砂をまぜたようにべたりとして時代遅れ。



ではあなたが持っていて、
私が持っていないものとは何なのだろう。


不安の穴がふとそこに開いて、
何もわからなくなった。