行き摺り

誰かがこちらを振り返ったとして、眼差しを交わす以上の何があるというのだろう。
あなたの目を引いたとして私の人生には関わりがない。

彼らが勝手にあれこれ言っているのを見ながら、私は一人で歩いて行くのだから。


眼差しを交わしたとして、私はその階段を下りていく。

流れてくる音楽に苛ついて、身体のどこかに時が残っていく。

死ぬ時に思い出したとして。
その時には、見る影もない姿になっていたとして。