白い雲
とうに日は落ちているのに、雲は白く光を反射している。
どこに続いて行くわけでもなく、その奇妙な明るさを見ている。
どこかへ行けるという、幻想を持つわけでなく。
どこかへ行きたいという、感慨が湧くわけでなく。
見慣れているわけでもない空に、何かしらの感情を持つわけではなく。
美しいわけではない。
目を奪われるわけでもない。
美しさが欲しいわけでもない。
どこかへ行きたいと思うわけでもない。
何かを思い出すわけではない。
誰かの事を想うわけでもない。
感情のない事を覆い続けていて。
あなたはどこを見ているのだろう。
全てを見透かされている事を、わたしはとうに知っているのに。