消息

久々に友人の消息が知れて、少し書いたものを読んでいた。
恩師の米寿の集まりがとあったが、となると生まれは大正も最後の頃か。友人は学問の道に未練があって、こちらにわかるはずもない話をたまに熱を入れて喋っていた。



短い文章を読んでいる内に、この一文に目が止まった。


「例によって、一高の寮歌を歌われて」


一高に行っていたならば、恩師のお年から言って、それは戦局悪化の時期と重なっている。そのまま卒業したのなら昭和二十年卒となるが、昭和十九年に徴兵適齢が二十歳から十九歳に引き下げられた(その後済し崩しに下げられる事になる)。
この方はまさにその年、十九であったはずだ。友人の専攻は文系だったから、終戦の前年、この方は学徒兵として召集されたかもしれない。



嗚呼玉杯に花うけて
緑酒に月の影宿し
治安の夢に耽りたる
栄華の巷低く見て
向ケ岡にそそり立つ
五寮の健児意気高し



戦地に赴く同級生と歌われた寮歌もあったであろうし、他の世代とはまた違った思いがこの世代にはあるのかもしれない。七十年近くたち、教え子らに囲まれて歌うそれは、ただただ幸せでありうるだろうが。


(少し修正しました)