口紅を変えた事

少し前に買った帽子をあれやこれや被っていて、ふと鏡で自分の姿を見るとまるで少年のようだった。
無彩色のスキニーな服を着て、顔と髪を隠すと性別のイメージが曖昧になる。
身体的には年齢を感じないわけでもないのに、平衡感覚がやや狂う。



だいぶ前にエレベーターに乗っていて、年配の男性がまじまじとこちらの顔を見ていた。奇妙に思いながらエレベーターを降りた後、店で見るともなく服を見ていると、正面の鏡の自分が目に入りギョッとした。肌が見たこともないほど白いのだ。


元々赤ん坊の頃のわたしは色が白かったらしいのだが、何かの拍子に当時の肌の色に戻るようだった。何度か同じような事があって、そのたび自分はいつのまにか忘れているから、要はおそらく元に戻っているのだけれど、一度は結局ファンデーションから何から変えなければならなかった。


それまではっきりした色を選んでいた口紅を白い光の入ったものに変え、淡い色調のリップグロスを合わせる。ほとんどノーカラーのファンデーションと口紅は、未だ変えたそのままだ。