金賢姫来日報道にまつわる問題点について

前回の記事を書きながら、我ながらどうも隔靴掻痒の感を免れず、多少書き直したりしたのだけれど、報道の仕方について少し感想がまとまったので書いておく。
前回最初のエントリで賢姫の来日セッティングのことについて、二番目のエントリで来日報道の事について書いた。
書きながら考えがまとまってきたが、今回の件で感じた違和感は来日の理由の不透明さだけでなく、二番目の報道のされ方にも由来している。だがこのことは、今回を通じてあまりはっきり意識されなかったと思う。
来日の経緯への不信から、なんとなく違和感は感じながらも報道に煽られて終わってしまった。


金賢姫に向けられた非難が十分な情報量に裏打ちされたものではなく、結果的に北朝鮮に有利な、まるで誘導されたかのような展開になった。
新事実や新しい展開が望めるはずも無いのに、なぜ来日を求めたのかという根本的な疑問はある。
ある意味ボタンの掛け違いのような程度のことではあるのだが、今回の問題点が意識化されないまま終わってしまう事に危機感を感じるので、考えをブログにまとめておく。


まず記者会見は韓国側の、十分な警備が不可能という理由で行われなかったと発表があったにも関わらず、それはほぼ無視して、テロ謝罪会見の不在が追及された。
また取材陣が賢姫の乗るヘリを追跡して、警備妨害と政府側から警告された事。
この二点から報道陣の行動が警備の必要性を無視していたことがわかる。
同時に韓国側からの要請を見ると、北朝鮮金賢姫暗殺を相当警戒していたこともわかるが、ファンジャンヨプ氏が実際に最近暗殺未遂にあっていることから、当然の警戒と思われる。


本来なら、政府の招請の無意味さを批判すると共に、それを生み出した背景を客観的に報じることで状況は浮かび上がってきたはずだが、一部のメディア優遇への反発が報道全体の空気を決めてしまった。


中井大臣は取材メディアの選定を韓国側の要請だとしているが、報道陣は明らかに納得していない。それはわかるとして、ならばその自分たちの不信をはっきり形にして報じた方が良かったのではないか。
結局メディア側の不満は中井氏への突き上げという形で噴出したが、ヘリ遊覧批判はその強引さから、中井大臣辞職への誘導だったと思われる。
金賢姫への批判もこの流れで利用された部分が見え、厚遇への追及が前面に押し出されるなど、本質を微妙に外している。


中井大臣のやり方がおかしいと思うなら、国民の前でその事を批判すればいいのであって、なぜ報道を操作する形でやってしまうのかわからない。
優遇が根深いという理由かもしれないが、内々の不満を仲間内で示し合わせて、報道そのものを歪めてしまうようでは本末転倒している。また歪めた弊害について自覚が無さ過ぎる。弊害というより物事の主従が逆転し、報復が主眼となり状況が正しく伝えられなかった。


今回の事は別段特別なことではなかったのだろう。今までと同じ、当たり前の意識としてされたのだと思う。だからこそマスコミは内向きで浮世離れしていると批判される。
このエントリはわたしの邪推であるのかもしれないし、ただ中井大臣のやり方の問題視が背景にあるにせよ、実際には一部メディアへの優遇の方が報道に影響していたように思う。そんな理由で事が私的制裁の色彩を帯びてくるというのは、いったい何なのだろうとは思う。


この国でまともな人間はニュースを見る時、その報道機関の立ち位置や諸々の権利関係、力関係を頭に入れている。
率直にいえば信用していないわけだが、考えてみれば狙い打ちでもう何人も首相や大臣を引きずりおろしている。言うだけ詮無いか。
だが今回、普段批判するような連中も簡単に誘導されるもんだなと思った。まあこれもいつものことだけれど。