自分を好きにならない男

というのを好きになるタイプがいて、彼女は「相手が振り向くと飽きるの」と言っていた。


その時彼女が追いかけ回していたのは私に好意を持っている男で、そのことは、彼女からそれとなく告げられて気がついた。私はその人には全く興味が持てなかったけれど、気がついたのは、彼女がそのつまらない男に気を寄せた理由がおそらく彼の私への関心にあるということだった。


彼女は彼の話を、私の前で愉しげにし続けた。たまに私の反応を窺いながら、けれどその話を聞くのは私には別段不愉快ではなかった。同じようなことをする女の子達のようないやらしさが、彼女にはなかったから。


気があるような素振りを見せても、声までかけてくる相手はほとんどいなかったから、私はいい加減飽き飽きしていた。彼らがそのくだらない自己完結の遊びをするなら、付き合う謂れはどこにもなかったし、自分が誰かを好きになるということもなかったから。
そのすぐ後彼女達とは縁が切れて、その後どうなったかは知らない。どのみち彼女の気持ちは長続きしなかっただろうけれど。


十代の頃に戻りたいかと問われれば、私はそれを必要としない。彼らと同じ時間など必要ではないから。私の人生はその頃狂ったけれど、私には彼らの仕草が耐えられなかった。