親の顔

その人が「自分は親のような顔にはなれなかった」と言う。そうだねと思う。あなたは彼等のようにはなれない。
最後までその人にとって親は親という存在であったのだろうし、私にはそんな幻想は抱けない。幼い頃からそのことを負い目として持ち続けてきたし、またある時点で私はそれをふっきってしまった。負い目に持つべきは彼等の葬式を満足に出せなかった時であり、そのこと以外何も荷を負う必要はない。

「育ちの良い」娘であることがどういう事なのか、抱えてしまう重さは本人にも本人以外にも早々理解されない。ただその重さは彼女から魅力というものを奪ってしまう。そう育ったならば決して幸せになることなどできないのだし、強い意志を持っていなければ自分さえ気付かないまま静かに潰れる。

今気付くのは、周囲の差すままにその手から目を背けてはいけなかったということだ。私は捨てる人間であり、そこ以外に真実は見出だせないから。

沢山の幻想があって、自分自身はそこから自由だったのだなと気付く。
鎖に捕まった人間が私に絡み付き、私はそれを冷たく眺めている。