脱北問題について 国内事情 民主党案「永住」「定住」の記述について


今までの主なエントリ
民主党 長島昭久議員のブログが、北朝鮮人権法案言及で炎上している事について
アメリカ北朝鮮人権法案 抜粋
北朝鮮人権法案関連 脱北問題について、中国をめぐって(改題済み)

北朝鮮人権法カテゴリを見ていただければ、全てわかるようになっています。)





さて、やっと書くところまで来たこの件。
まず脱北救援NGOについて。
北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
北朝鮮難民救援基金
救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク(RENK/れんく)


この三つである。これらについて記述せねばならないことはあるが、それは次のエントリにする。
追記:この三つもそれぞれスタンスが違うが、混同するような事を以下エントリで書いてしまっている。


参考 米国人権法案原文 機械翻訳つき
   民主党草案


今回長島議員の件で一番問題となっていたのは、永住定住の話。これは脱北救援NGO北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会のサイトを見ていて感覚がわかってきた。
北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会:かるめぎ61号2005.2.10

この二項目目。

○「北朝鮮人権法」 の早期制定に向けて
〜 守る会と北朝鮮人権法案 〜"


(略)


民主党案作成へのかかわり

  日本でも北朝鮮人権法を作るしかない−、そのために民主党民主党は昨年11月12日、関係市民団体から最初の本格的なヒアリングを行なった。当会のほか、救援基金、民団脱北者支援センター、弁護士の会、日本財団等が出席したが、守る会は次のような提案を出し、これに沿って以下の4点を中心に意見を述べた。


北朝鮮人権法案に盛って欲しい事(守る会より提出)


北朝鮮に対し、強制収容所を始め、著しく人権を抑圧し、在日朝鮮人帰国者および日本人配偶者を傷つけてきた施設の撤去を求め、この問題に関する国際人権査察を受け入れることを求める。

② 日本が、元在日朝鮮人と日本人配偶者の内、脱北して再び日本に戻る事を希望する者およびその家族を、在留資格を与えて受け入れる事。このようにして日本に戻って来た者の内、日本国籍取得を希望する者に対しては、優先的にこれを与える事。

彼らに対して再定住支援措置を講ずる事。ここで再定住支援措置とは、支度金支給、一定期間の住居提供、日本における生活能力および労働能力習得支援、日本語習得支援、就職斡旋、就職して自立するまでの期間の生活支援、以上を執行し相談相手となるスタッフを置く等の事を指す。

被拉致者、特定失踪者、在日朝鮮人帰国者およびその配偶者で行方不明の者の安否調査を行うため、調査機関を設置する。(この項はヒアリング終了後に追加)


民主党案の「定住」という言葉はここででてくる。この続きの部分では、民主党案に直接採用された事がはっきりわかる仕組みになっている。この項目については、民主党が案をまとめるまでの空気が若干わかるので、一読をお勧めしたい。一瞬私もわからなくなったのだが、つまり私が以前書いたように、「定住」という言葉に言われているような意味はない。また、脱北者生活保護を受けているのはむしろ少数派であり、ある意味で平島筆子さんは恵まれた状況にあった。ここにも今回の2ちゃんねら達の間違いがある。


この救援NGOの間違いとしては、北朝鮮への帰国事業と脱北問題とを混同してしまっている事がある。そもそも名前が「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」であり、当たり前といえば当たり前の話なのだが。
日本国籍を優先的に与えて欲しいというのは、幾ら昔日本にいたといえ、少々筋が違うとも思うが、脱北者が無国籍になってしまう場合がある事、また北朝鮮籍などでは現実に動きが取れないという事情もある。


また、帰国した人々は北で最下層に置かれ、脱北者の中で割合は高いようにも思われるが、脱北者はそのような人々だけでない。民主党はその辺り、きちんと分けて受け取らなければならなかったのだが、そこをややきちんとせぬまま法案を作ってしまった。追記修正 なお永住については、元日本に住んでいた人間を優先するというニュアンスで、特に言及がある。この辺り、問題があることと別に、必然的に数が脱北者全体に比べて少なくなるが、騒いでいた連中は、ここを無視していたように見えた。おそらくまとめサイト等を作った人間が、数を煽る為に意識的にここの構造を切る取上げ方をしたのではないか。民主党が帰国事業問題と脱北問題の混同を、ほぼそのまま受け取ってしまった事に今回の問題があり、国際問題として捉えると言いながら、民主党は国内の一定の立場に偏り、脱北者全体という捉え方をやや外していた。
民主党が、定住はともかく永住を採用してしまったのには、明らかに問題があった。


但し。
現在日本が受け入れている100名程度の脱北者は、殆ど元日本にいたか、日本人妻であるかのどちらかである。そうであればこそ日本は受け入れてきたのであり、そのことを鑑みれば彼らの理屈も通っている。
また帰国事業と脱北問題、拉致事件については無視できない関係がある。元救う会新潟会長であり、この「生命と人権を守る会」名誉代表である小島晴則氏のように、拉致救援活動を行ってきた人間が、元々帰国事業に荷担した罪悪感から行動を始めた例がある(氏は元共産党員)。氏周辺には最近ゴタゴタがあるようだが、彼のような人がいなければ、拉致問題の進展は決して望めなかった。そこを我々は決して無視してはいけない。更に書くべき事はあるが、それはあとで記述する。


なお民主党が意見を求めた同じ場に、救援NGOだけでなく、救う会日本会議(この名前には反応する方もいるように思うが)も同席している場面がある。以下その模様。


 これに対して、出席の市民団体から、さらに意見が述べられた。

 守る会からは、北朝鮮に帰国して行方不明になった元在日朝鮮人と配偶者について、安否調査を行なうことを「4.」項に明記すべきであるとの意見が出された。

 救う会からは、拉致について調査するだけでなく救出するための活動を入れてほしい、また「半年をめどに解決する」といった具体的期限を入れるべきであるという意見が出された。

 日本財団からは、「脱北者北朝鮮難民と認定し」という文言を入れることによって入管の法律の対応が変わる可能性が高く、そうすべきであるという意見が出された。

 各団体からの意見を受けた民主党は、ヒアリングの翌日にはこれらの意見を盛りこむことを党として了承し、民主党案として決定された。

 北朝鮮の人権問題に関しては、国会でもテーマとなり、自民党も法案提出のための作業を進めていると伝えられている。一刻も早い人権状況改善のために、2党間の摺り合わせが順調に行って、今国会中にもこの趣旨の法律が制定されることを強く願うとともに、そのために行動していきたい。


こんな感じである。どう見ても、このNGOがごり押ししたという感じには受けとれないと思うが、どうか。
また、永住の方については、以下の記述が参考になる。(民主党自民党ともに、仲介役として政治家になる前の米田健三氏が活躍している。当たり前だが、決しておかしなルートで食い込んでいるわけではない)

脱北者・日本人配偶者ら、人権諸団体とともに
安倍幹事長代理・鳩山民主党副委員長を訪問

(安倍幹事長代理へのメッセージ)

自由民主党幹事長代理    
 衆議院議員 安倍 晋三 様

榊原洋子 他 脱北帰国者・日本人妻 有志一同
〈協力〉北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
北朝鮮難民救援基金  コリア渡来人協会 
救え!北朝鮮の民衆 緊急行動ネットワーク(RENK)     

民主無窮花

 北朝鮮人権被害者救済法制定のお願い


(略)


北朝鮮を脱出した元在日コリアンや日本人妻たちは、現在100名に近づきつつあると思います。脱北者の私たちは、自分たちが脱北したことで、北朝鮮に残る家族、親族に迫害が及ぶのではないかと不安な日々を送っています。安全な日本にたどり着いた後もなお、金日成政権に対する恐怖に怯えながらの毎日を過ごしています。


北朝鮮に残っているのは私たちの家族だけではありません。北朝鮮は「地上の楽園」だという徹底した虚偽宣伝に騙されて北朝鮮に渡り、今も生き残っている友人たち、日本人妻たちが故郷日本を夢みています。生きて日本に戻れる日を待っています。この人たちのためにも、幸運にも日本に戻れた私たちが何かできることをしなければ、「もうこれ以上黙っていては家族も救えない」との思いでこの場にきました。日本の政治を動かしている方々にお目にかかり、私たちの状況をご理解いただくことを願っています。


(略)


特に留意していただきたいのは以下の課題です。

1 日本国籍を有する人や日本を故郷とする元在日コリアンおよびその家族が、北朝鮮から脱出してわが国に助けを求めた場合、外務省の在外公館で速やかに保護して下さい。現在、在外公館には朝鮮語を話せる職員がいないところが多く、また保護した脱北者を収容する部屋もありません。このため、脱北者を保護しようにも、事実上保護することができない状態です。


 早急に、脱北者を在外公館に保護し、日本その他希望する国に入国できる日までの安全を確保する体制を整備して下さい。


2 日本に入国した脱北者が、速やかに日本社会に適応し、自立した生活が始められるように、必要な支援をお願いいたします。


(略)


 ⑤特に比較的若い人については、学校教育の機会を提供する施策をお願いいたします。北朝鮮の学校を卒業しているとしても、卒業証明を得ることはできません。このため、書類上無学歴となり、職業資格を取得したり就職するに際して大きな障害となっています。社会に貢献できる人材として成長していくためにも、学校教育の機会を提供することは必須の課題です。

 ⑥脱北者が日本に入国した経緯によっては、朝鮮籍であったり、中国籍であったり、あるいは、無国籍であったりしています。これまでの脱北者が非常手段を使うしかなかったことを考慮し、かつて日本に定住していた人たちとその家族であることに鑑み、永住権の取得あるいは日本国籍の取得に格段のご配慮をお願いいたします。


北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会:かるめぎ №63 2005.4.15


この無学歴・無国籍という問題については、現実にかなり深刻な問題のようである。これでは日本に馴染む事などできはしないし、独立も無理。彼らが環境を整えてくれというのは、そういう意味だ。
具体的な要求として、韓国のハナ院のような受日本社会への定着準備支援を行う施設設置(具体的に難民事業本部が運営する定住促進センター等を使ってほしいという記述)・公営住宅等の住居確保・日本語習得支援・職業訓練や雇用者への給与補助等の雇用促進策による自立支援・最低二ヶ月の生活費保証。いろいろと邪推する向きもあったようだが、これらはテクニカルな問題の解決法である。


また、彼らが帰国事業と問題を混同してしまうのが無理からぬ事も判っていただけると思う。現在人権という概念から、また現実を考えれば、脱北者に帰国事業を結びつける必要はないわけだが、これは在日の方々の歴史として切実な問題であり、総連や共産党、そしてマスコミの負って来た罪でもある。(追記:なお、このNGOの主要メンバーには元共産党員などの日本人が多い。)無論現在進行形の悲劇でもある。責任という言葉を使うのは適切ではないが、我々日本人が無視できる問題でもないだろう。しかし、日本人としては在日の方々と立場は同じではないし、彼らだけを特別視というのも現在の状況を思えば少々違う。


ここで、ある連想をし、反発する方もいるだろうが、黙って読み進めて欲しい。それも私はきちんと触れるつもりでいる。


さて、長くなったので、また新たにエントリを建てる。
しんどい作業はまだ残っているのだが。