傷が傷でなくなる事は
私のように感覚を失った人間には、全て幻といえばそうではあるのだが。
感情に動かされる時だけ、微かに意識を取り戻す。苦しみであるとか、悲しみ、たまにどうしようもない突き上げてくる何か。それがなかったら、私は生きているとは言えないだろう。
あなたは幸せなんだろうか?
幸せである事は大事だろうか?
ここにいることが現実とも思えない。
間違って何かに捉えられたのだと、そう思うしかない時がある。
この意識は、世界に届かなくなっている。
なぜ何もかも失っている私がここに立ち、彼らはそこに居るのだろう。
私はあなたほど、贅沢にはなれない。
あなたは全てを持っている。私が決して得られないものを玩具にしている。
私はそれを見て、痛みを感じているのだろうか。
隣に座っている人。
あなたが死んでも、私は何も感じない。